【腐食療法】 わが国における痔疾患の治療は仏教の伝来とともに中国から伝わったとされていますが、その中に痔核に対する腐食療法(痔核を腐らせて脱落をはかる治療法)も伝えられ、古典的療法として行われてきました。 江戸時代に入ると蘭学者によりオランダ医学が盛んに取り入れられるようになり、1700年代には中国伝来の知識を参考にして考案された日本独自の方法と蘭学を組み合わせた医療が実施されるようになってきました。 明治に入ると西洋医学が積極的に導入され、その結果肛門領域の古典的療法は急速に衰退していきました。 1940年に日本直腸肛門病学会が設立され、1960年代までは痔核治療について硬化療法、腐食療法、手術療法などの優劣が議論されていました。 腐食療法には、腐食作用の強い薬剤を痔核に注射することによって激痛を生じさせたり、薬剤が目的以外の組織に広がった場合過大な領域を腐食させるため、肛門の機能に著しい障害を残すことがありました。 さらに、砒素が腐食剤として使われる場合もあり、その毒性のために患者が死亡することもありました。 その結果、日本直腸肛門病学会が日本大腸肛門病学会と改名された1967年ころには、腐食療法は安全性から排除すべき治療法として扱われるようになりました。 日本大腸肛門病学会の重鎮であった故隅越幸男先生も自らの論文の中で 「肛門疾患の治療にあたっては、何よりも肛門機能を損なわないという点を基本概念とすべきであろう。<中略>本邦で行われていた腐食療法は、熟達した専門医が、適応を厳選して行う以外はやらない方がよい。手術よりは注射で簡単に治したいという患者の希望で無差別に行われる壊死注射療法の弊害は、肛門機能の著しいダメージとなって現れている」 と警鐘を鳴らしています。 ![]() このような腐食剤を痔核に何回か塗ることで腐らせて脱落させる、より安全な薬物腐食塗布療法を行っている医師もいます。 【医学論文】 ・黒川彰夫,増田芳夫,畑嘉也:痔核に対する古典的結紮療法.日本大腸肛門病会誌 56:798-803,2003 ・隅越幸男:痔核の治療にあたって.日本大腸肛門病会誌 38:737-740,1985 ・畑 嘉也:薬物腐食塗布療法による痔核の治療.日本大腸肛門病学会雑誌 40:533,1987 (学会発表の抄録) | |||
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